みなさんは「井戸」と聞いたら何を思い浮かべますか?映画や時代劇で見たワンシーンや水道の通っていない田舎の風景を思い浮かべる人もいるでしょう。
現代の生活ではあまり馴染がないように思われる井戸ですが、実は今でも下町や公園などで使われていることがあります。
昔から生活に欠かせない存在だった井戸はどのような仕組みで水を汲み上げるのでしょうか?そして井戸水はどこから湧いて出ているのでしょうか?
今回は井戸の種類や仕組みについて詳しく紹介していきます。
井戸の種類と特徴
井戸にもいろいろな種類があり、特徴も違います。ここでは「掘り抜き井戸」と「打ち込み井戸」を中心にご紹介します。
堀り抜き井戸の特徴
掘り抜き井戸は地中深くまで掘った穴の底に湧き出る地下水を、ロープや縄のついたバケツで汲み上げるタイプの井戸で、時代劇や怪談話に出てくる井戸はだいたいこの掘り抜き井戸です。
穴の直径は2尺ほど。2尺というと今でいう60㎝程度になります。井戸の深さは6メートル前後が主流ですが、土質によってはさらに深く15m前後まで掘削が可能です。
掘る場所をあまり選ばず、水があまり出なくても井戸の直径や深さを調節して希望の水量を確保することができます。
打ち込み井戸(打ち抜き井戸)の特徴
打ち込み井戸は、小さな穴の開いたパイプを地中に打ち込み、そのまま地下水を吸い上げるシンプルな井戸です。
狭い場所でも掘ることができ、長時間の工事も必要ありません。そして工事の際に出る砂利や土も少ないので他の井戸に比べると手軽に井戸を掘ることが可能です。
その反面、打ち込み井戸は水量が少ないという欠点があります。
その他の井戸
井戸にはこの代表的な2種類の他にもさまざまな種類があります。
【井側井戸】
昔から存在する手堀りで作る井戸で、浅い層にある地下水を井側という円筒上のコンクリートの枠の中に集めて溜めます。
地中の水を井戸の中に溜めているので水量に乏しい場所や水が不足しがちな季節にも対応できます。
【ボーリング井戸】
ボーリング作業によって人の手では掘ることが困難な硬い地層や岩盤を掘り進め、地中深くにある地下水を汲み上げることを可能にした井戸です。他の井戸よりも安定した水量と水質が期待できます。
井戸水はどこに溜まっているのか
では井戸に溜まる地下水はどこから出ているのでしょうか?
ここではそのメカニズムを解説していきます。
地下水が溜まる原理
① 雨が降る
② 空気中のホコリや塵が雨水の中に入り、二酸化炭素が含まれて弱い酸性になる
③ 土の中に浸み込む
④ 土の中でろ過され、土や岩の成分と酸性の雨水が反応し、酸性が和らぐ
⑤ 土の下にある風化した岩石や砂の層に浸み込み、そこでもう一度ろ過される
⑥ さらに下の岩石の隙間などに浸み込み、岩石の成分が溶けて入っていく
岩石の層に浸み込んだ地下水は、ゆっくりと移動しながら井戸水となったり、川に流れていったりします。
地下水はどこで使われているか
ではそんな地下水はどのような場所で利用されているのでしょうか?
【井戸水】
井戸水は飲み水としてだけではなく、生活用水や農業用水として利用することがあります。特に酪農家など水を多量に必要とする人たちには井戸水はなくてはなりません。
また、使用している水の一部に井戸水が使われているプールや、大きな工場でも井戸水が使われているケースもあります。
【湧き水】
行楽や学校の遠足などで山へハイキングに行ったとき、岩の割れ目や小さな小川になっている湧き水を見つけることがあります。これは地下水が地表面に出てきたものなのです。
湧き水を飲んで「冷たくておいしい!」と感じるのは、気温が低い地下で冷やされている水だからなのです。
現在は銘水としてその地域のお店で売られたり、ミネラルウォーターの原料になったりする場合もあります。
【温泉】
日本には有名な温泉地が多くあります。それは、火山が数多くあり、その山の地中深くに熱源があるということです。温泉は、その熱で地下水が温められることでできるのです。そのため、温泉地の近くには火山が多く、実際に温泉地の箱根では火山ガスが出ている大涌谷が有名な観光地となっています。
地下水の問題点
便利な地下水ですが、問題点があります。ここでは地下水を井戸水として使用する際の問題点を挙げていきます。
汚染されている可能性がある
井戸の場所によって水質は変わってきます。絶対に良質な水が出るとは限らないので事前に水質検査をしておきましょう。除菌器を使って鉄分やマンガンを抑えることも可能です。
近くに工場や畑がある場合、そこから薬品などによる環境汚染物質が井戸水に流れ込んでくる可能性があります。
昔ながらの家が多い地域では地下水に下水が混入してしまい、井戸水にピロリ菌がいる可能性も出てきてしまいます。
井戸水の水量が足らなくなってしまうことがある
井戸の中に水が少ししかなかった場合、洗濯機やトイレなどがうまく作動しなくなってしまうかもしれません。井戸だけでなく水道との併用が大切になってきます。
また、どれだけ井戸水が出るかは井戸を掘ってみないとわからないので、井戸掘りを業者に依頼する際は専門的な知識のある方に相談してみるといいでしょう。
停電したとき水が出なくなる
井戸から水を汲み上げるために電動のポンプを使用している場合、停電してしまったらそのポンプが動かなくなってしまいます。
洗濯物が変色してしまう
鉄やマンガンが含まれている井戸水を洗濯に使用すると洗濯物が黄ばんだり黒ずんだりしてしまうことがあります。
ポンプの原理と仕組み
ここからは井戸から水を汲み上げるためのポンプについて解説していきます。どのような仕組みになっているのでしょうか。
どうやって水を汲み上げているのか
ポンプの原理はよく「コップに入っている水をストローで飲む」ことに例えられます。
コップの水面は大気圧がかかっている状態で、ストローの中の空気を口で吸うことにより、ストローの内部は真空状態になります。
この大気圧と真空状態の働きによって水が吸い上げられていきます。より具体的に水が汲みだされる仕組みを説明すると以下のようになります。
① シリンダー内のピストンが上に動くことで水面も引っ張られていきます。このとき呼び水というポンプを使う前に入れておく水が配管の空気を抜くことによって気密性を高め、真空状態にします。
② ピストンを下に押すと先にある木玉の弁が開き、水がピストンの中に入ります。このときピストンの底にある弁は閉じています。
③ ピストンが下に到達すると、シリンダーの中にある水がピストンの上に移動します。
④ ピストンを上に引き上げると木玉が水に押されて閉じて、シリンダー上部にある口から水が出てきます。同じタイミングでシリンダーの底にある弁が開き、そこに水が入ってきます。
⑤ もう1度ピストンを下に押すとピストンの中に水が入ってくるので、上下させて水を汲み上げていきます。
このように、ピストンを上下させることによって水を汲み上げているのです。
ポンプの種類
井戸の種類と同じように、ポンプにもさまざまな種類があります。そして井戸の種類によって適しているポンプの種類も変わってくるのです。
打ち込み井戸には先ほど仕組みを説明したような手動のポンプが適しています。
掘りぬき井戸には浅堀りと深堀りと2つの方法があり、掘る深さによって浅堀り井戸には「浅井戸ポンプ」、深堀り井戸には「深井戸ポンプ」と異なったポンプを使用して行われます。
ポンプの故障とメンテナンス
長年使用しているポンプは「出てくる水量が減った」「水が出ない」などの故障が起こってしまうことがあります。
ポンプは井戸の中の人の見えない場所で使用される装置なので、いつ不具合が起こったかわかりにくく、故障に気づくまで見逃してしまいがちです。
井戸水の中にある不純物がパイプに付着することで出てくる水量が減っている可能性もあります。定期的な洗浄、もしくはパイプの交換は欠かしてはいけません。
まとめ
いかがだったでしょうか?井戸にもさまざまな種類があり、水を汲み上げる仕組みはそれぞれ違うことがお分かりいただけたと思います。映画や時代劇の中の存在だった井戸もこうやって詳しく調べてみると身近に感じられたのではないでしょうか?
水道の蛇口を回すとすぐに水が出てくる現代では、井戸が使われることは減ってきました。
しかし、まだ公園などでは使われており、一般家庭でも水道代を抑えることができたり、1年を通して水温が一定だったりとメリットもたくさんあります。また、万が一災害が起こってしまった場合、防災井戸としても重宝されます。
浅井戸なら業者に頼まなくても自分で掘って作成することも可能です。また、業者に依頼する場合、数日で井戸を掘ってもらえるでしょう。庭に井戸、作ってみませんか?