現代はライフラインも発達して、水道管もひかれているため井戸を使う家庭も少なくなっています。江戸時代では生きるための大切な水として井戸が掘られていました。伝統的な井戸を新しく設置することは減りましたが、いまでも重要な水源としたり、災害時に備えて井戸を使用している地域もあります。
井戸からはそもそもどのように水が出るのでしょうか。また、井戸は深いですがどれくらいの深さが必要なのでしょうか。今回は井戸について、水が出る深さや井戸の種類、水質の種類などお伝えしたいと思います。この記事を読んで気になった方は、井戸堀りに挑戦してみるのも楽しいかもしれません。
どれぐらい掘れば水が出る?
井戸をのぞくとずいぶん深いですが、水を出すためにどれくらい掘ればよいのでしょうか。
水が出る深さとは?
正確な数字はありません。なぜなら、地盤の状況や地質によって変わるからです。一般家庭ですとおおよそ20~40mくらいだといわれています。もちろん事前に調査をすると、そこから掘る深さの目安はつきます。
井戸は深さによって種類がある!
井戸というのは深さによって種類分けがされています。まずは浅井戸、深井戸、自噴井戸の3種について解説していきます。
① 浅井戸
昔から使用されている井戸です。時代劇に出てくる井戸を想像してください。深さは7~10mほどで雨水をくみ上げているので水質は悪く、水量も定まりません。そのため飲料水としては不可ですが農業や生活用水として利用されています。
② 深井戸
深さが20~30mほどで浅井戸よりもずいぶん深いです。岩盤よりも下を流れる地下水をくみ上げているので、浅井戸と違い水質が安定しています。
③ 自噴井戸
地下水が自ら湧き上がっている井戸です。温泉も自噴井戸に当てはまります。ただどこでも発生するものではなく、いくつかの条件が重なっておこる自然現象です。家の庭にほしくても掘って現れるものではありません。
次に井戸堀りの種類のご紹介です。
① 抜き打ち井戸
この井戸掘りならDIYでもできます。約10㎝ほど穴を掘ってパイプを入れます。するとパイプまわりの水を吸うので徐々に水が溜まります。
② 堀抜き井戸
ロープに桶やバケツを吊るし、井戸の中に投げ入れて水をくみ上げるタイプです。ホラー映画にでてくるような形です。井戸を掘るときは水脈を知らべて豊富な水がでそうなところにあたりをつけますが、この方法は水量が少なくても掘る深さと井戸の直径を調整することで水量を確保できるのがよい点です。
③ 打ち込み井戸
最近ではあまり作られないタイプです。細い鉄管に先端に穴をあけ、ハンマーで地中に打ち込みます。方法としては簡単ですが、打ち込み井戸は、管の経年劣化でサビなどが水に入るため飲料水としては使用できません。
井戸の深さによって何が違うの?
井戸の深さによって水質が異なります。なんとなく深い地下水のほうが水質がよい気がしますが、そんなことはありません。深さと水質には何も関係がないのです。深さは目的によって変わります。
井戸の目的によって深さが違う!
① 飲料用
念のため水質検査は必要ですが、深井戸は水質が安定しやすいため学校や銭湯や大型スーパーに利用できます。
② 畑や農業用
これは掘抜き井戸が当てはまります。水質は保証できないので飲むことはできませんがガーデン用など生活水としてならじゅうぶん利用できます。
③ 災害用
雨水や川水をくみ上げる抜き打ち井戸になります。手押しポンプを使用する井戸は抜き打ち井戸であることが多いです。飲料はできませんが、災害用としては頼りになる存在です。
水質と井戸の深さの関係とは?
上記でも紹介したとおり、深く掘っても水質がよいという保証はありません。地下水にはいくつもの帯水層があります。深く掘れば掘るほど、ろ過されますが地域によって地層の成分が違うため必ずしも水質がよいとはいえないのです。ここで少し帯水層について簡単に説明します。帯水層とは、地下水のくみ上げの対象となる層のことで砂などの層の透水性が良い地層のことです。
雨が降り雨水が地中へ染み込み浸透すると、地層の下にある砂などの層の隙間に雨水が溜まり、これが地下水となります。こういった溜まったところを帯水層とよび、砂などの層の3分の1を占めています。砂などの層は地域によって大きさが違い、厚さが数m~100m以上と差が出ます。幅も1㎞~数10㎞にもなります。
地下水には種類があるため地下水の種類と、よりよい水質について解説します。
地下水には種類がある
地下水というのは、圧力を受けている「被圧地下水」と地層の浅いところにある「不圧地下水」の2種類があります。
① 被圧地下水
地下のずっと深いところにあり、粒の小さい粘土やシルト(砂より小さく粘土より粗い土粒子)で作られています。水を浸透させない不透水層(難透水層)で上下を挟まれ、圧がかかった地下水です。
② 不圧地下水
上に不透水層がなくこの地下水をくみ上げるのが浅井戸になります。雨などの天候に左右されるため、水がすべてなくなることもあります。不圧地下水は地下水のある帯水層の中のもっと深い場所に存在していますが、地下水ですべて満たされているとは限りません。帯水層があっても地下水はない、という現象もおきています。
よりよい水質を求めにはどうしたらいい?
「日本の水はおいしい」といわれるように水質はよいほうです。地下水が地中で浄化され、わずかな炭酸ガスとミネラル成分が含まれているからです。いちばん上の帯水層は地表に近いため、雨が降れば直接的に浸透します。汚染が進んでいる場所もあるので、その下にある2番目の帯水層のほうがろ過をされている分、水質はよいです。
浅井戸よりも深井戸の水質がよいのはこのような理由が考えられます。しかし地域によって地層の成分が違うため深いから水質がよいとはいいきれません。深い帯水層からでも汚染された地下水であることは十分にあるため、ろ過装置が必要なこともあります。水質検査をすることがいちばん安心です。
まとめ
今回は井戸の深さを中心にお伝えしました。井戸を自分で掘るなら抜き打ち井戸になりますが、飲み水として利用するなら水質検査が必ず必要です。深井戸になると専門業者に頼むことになりますが、深く掘れば水質がよいとは限らないので気をつけましょう。
地下水は奥が深く、層によって水質が違います。井戸を作るときは目的を何にするか決めてからのほうがよいでしょう。井戸の導入に自信のない方は、井戸掘りのプロに相談することをおすすめします。