都会ではあまり見かけない「井戸」。しかし、ご実家などで見かけたことがある方もいるのではないでしょうか?昔から日本人に親しまれてきた井戸ですが、実は近年再度注目されつつあるのです。災害時に水が供給されなくなった場合でも使用できるため、備えのために作成しておきたいという方が増えてきています。また、普段使いに使用する方も多いです。水道と違い費用がかからないので、気兼ねなく使えるのが良い点です。
井戸を作る場合、誰もが気にしがちな疑問の1つに「井戸水は飲めるのかどうか?」があります。水は透明で綺麗でも、細菌や有害物質が含まれていた場合、体調を崩す原因になってしまうのです。
今回は井戸水を飲むことができるのかについてご紹介したいと思います。
井戸水は飲める?
井戸水から汲み上げられる水と水道水の大きな違いは、「消毒がされているかどうか」です。水道水は薬品を使用して殺菌し、安全性を高めています。井戸水はそういった過程はなく、地下水を汲み上げただけです。井戸水は綺麗で飲めるイメージがありますが、一般的に「ミネラルウォーター」として飲料水に使用されている水は深井戸から取り出される水のことです。
一般家庭に良くある浅井戸から汲み上げられた水は、深井戸水に比べてあまり安全とは言えません。深井戸とはおよそ地上から30メートル以内の井戸のことを指し、浅井戸は地上から8メートル以内の井戸のことを言います。深井戸の場合は地中深くに水がたどりつくまでに地層を何層も通ったしっかりと濾過をされた水を汲み上げます。粘土層に挟まれていることが多いので防菌効果が期待できるうえ、地層を通る過程で豊富なミネラルを含むようになります。浅井戸の場合も確かにミネラルなどを含みますが、浅い場所から汲みあげるので、地上からの影響を受けやすく、飲めなくなってしまうことも多いです。
日本では昔から井戸水を飲む風習がありましたが、雑菌などの衛生面から見た場合、あまり飲むことはお勧めできません。そのまま使用する場合は、花や木に対して散水することが多いでしょう。
飲める井戸水と飲めない井戸水の違いとは
飲める場合と飲めない場合の井戸水は、上記で記載した深井戸・浅井戸の差だけではありません。一般家庭で使用されている浅井戸から飲める水は、安全面を考えて加熱処理をする必要があります。しかし飲むことができるのに対し飲めない井戸水もあります。この差はいったい何なのでしょうか?
井戸水の飲めない原因は「その土地が昔どうなっていたか」と「有害物質が含まれていないか」になります。井戸のある場所が昔は海だった埋立地などでは、塩分濃度が高くなりやすいうえ、有害物質を含んでしまいやすく飲み水に使用できません。また、地上に農薬を散布していたり、近場に汚水が流れてしまっている場合なども同様に飲み水として使用できなくなります。また、井戸水のなかには鉄の匂いがきつくて飲めないものもあります。場合によっては濾過機を使用すると改善されることもあるようです。
井戸水を飲むメリット・デメリット
井戸を掘って水を飲む場合、どのようなメリットが考えられるのでしょうか?
・無料で使用可能
・災害が発生しても断水しない
・カルキ(塩素)の味がしない、甘い
・カルキ(塩素)の味がしない、甘い
井戸の最大のメリットは水道代がかからない点です。水道と違い、水の使用量の上限はないので、頻繁に水を使用するのであれば重宝します。また、地震などの災害や、水不足になっても井戸から供給できるのも良い点です。
井戸水は自然の水なので塩素が含まれていません。飲んでみると口当たりが柔らかく、ほのかに甘みを感じられるので、井戸水を好んでいる方も多いようです。また、水温が一定です。夏は冷たく、冬は暖かく感じるので洗い物やお風呂に使用すると便利でしょう。一方で以下のようなデメリットも存在します。
・井戸の掘削費用・維持費がかかる
・せっかく掘っても使用できない水脈に当たる可能性もある
・電力供給が途絶えると水が出てこない
・水質が変化することがある
井戸を作る上で、やはり初期費用がかかります。最近の井戸は電動式のものも多く、使用時にはランニングコストがかかってしまいます。井戸掘りは運による影響も大きいです。井戸掘りをせっかく行っても必ず良い水が出てくるとは限りません。湧き出る水量が少なかったり、濁りが取れなかったり、水に汚染物質が含まれている可能性があります。
水を汲みあげるのに電動のものを使用した場合、災害や停電で電力供給が途絶えてしまうと、井戸を使用できなくなってしまいます。非常時でも稼働できるタイプや電源もありますが、別途費用がかかります。また、途中で水質や水量が変化する可能性があります。特に浅井戸の場合は地上からの影響を受けやすいので注意が必要です。
水質検査で飲めるかを確認しよう
井戸掘り後は必ず水質検査を行いましょう。保健所などに相談をおこなえば調査をしてもらえます。また、水質調査は専用のキットなどがあります。自分でも気軽に行えるので是非試してみましょう。水質調査の項目は一般的に12項目程度、費用は平均1万円程度で行う業者や保健所によって値段が変動します。また、他にも検査可能な成分もある場合、別途料金が発生しますが調査してもらうことは可能です。
井戸の水質検査は年に1回定期的に行った方が良いです。井戸水の水質は変化するため、1度調査すればずっと安全とは限りません。定期的に水質調査を行うことで安全な井戸水を使用することができます。
法律上、水道水以外は水質調査の義務はないので、井戸水の場合調査の必要はないのですが、安心して使用するためにも、調査はしておくべきでしょう。
飲食店などで井戸水を使用する際も法的規則はありません。しかし、不特定多数の方が飲むのであれば、やはり安全面の観点から調査しておくようにしましょう。井戸水が調査で安全と判断された場合でも1度加熱処理を行うようにしましょう。細菌の大半は高熱で殺菌することができるため、安全に使用することができます。
まとめ
井戸水は飲むことができます。しかし、比較的安全な深井戸と違い、浅井戸の場合は地表の影響を受けやすいので注意が必要です。また、飲むことができる井戸とできない井戸の違いは、その土地の成り立ちと水の状況によります。
井戸水は環境の変化に影響を受けるため、水質が変化します。年に1回は水質検査を行うようにすると安全な水を利用できるでしょう。また、飲む際は加熱処理すると、簡単に殺菌が行えます。水は私たち生き物にとってなくてはならないものです。井戸水について詳しく知り、より安心で快適な生活を送りましょう。