水道設備があらゆる家庭で使用できるようになったのは歴史的に見ればごく最近のことで、それまで井戸掘りは古くから世界各地で数多く行われてきました。そして井戸掘りによって得られた井戸水は命を繋ぐ重要な存在となり、神聖視されることも少なくありませんでした。日本では井戸には”井戸神”として弥都波能売神が住むといった考えがあり、井戸の扱いは井戸神の怒りを買わないように細心の注意を払うべきで、井戸に刃物を投げ込んだり、中に向かって大声を上げるなどの行為は重大な禁忌であり行うべからず、といった教えが存在しています。また、地中に小さな水面を持つ井戸は黄泉の国への入り口であるとも言われていて、数々の伝説や近年の小説などでも井戸は重要なキーワードとして何度も登場しています。
こうした伝説や風習は日本だけのものでなく、世界各国で似たような話がたくさん残っていて、現在も井戸にまつわる神様や精霊の存在を大切にしている地方もあるようです。井戸に本当に不思議な力があるものなのか、実際のところを確かめるのは難しいですが、井戸を大切にして良質な水を利用できる環境を保っていくためには、きめ細かな注意を払って生活していくことが大切なのは間違いなさそうですね。